家族はつらいよ、観てきた。 |
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仕事が早く終わったんで雨の中行ってきたんですが、360座席に観客7人はいささか広すぎるというか・・・
山田洋次監督の最新作。
タイトルからも分かる通り、自ら手がけた喜劇の精神的な後継作として手がけられたものと思われます。晩年離婚をテーマに描かれていますが、登場する一家が総じてスットコドッコイで、殊更大げさに波風が立てられてゆく作風が山田喜劇だなぁ、と感じました。
親子孫の三世代が同居する家庭構成(しかも嫁に行った娘が実家にホイホイ帰ってくるシチュエーション)は今日ではもはや懐かしい過去の『家族の姿』。主人公:周造は、かつて一家を収入で支えた大黒柱としての過去の実績と、家長という立場に尊厳の存在を信じこむ、今風に客観視するなら『老害』というべき人物で、「あー、いる。ほんとうにこういう面倒くさい団塊、困る。」といった人物。この溢れ出る面倒っ臭さを橋爪功さんが演じきっていまして、面倒っ臭さと若干の憎めなさの加減が絶妙。また、その妻で離婚を持ちかける富子を吉行和子さんが演じてらっしゃいますが、これがまたすばらしく、なんとも言えない天然ぽさ、それ故の取り付く島のなさに、柔らかな凶器ともいうべき鋭さを感じます。でも根底で家族を思っている描写もあるから、そこがまた力加減の妙、というか・・・このお二人の演技力による部分が大きく感じられました。大笑いはしないけど、終始クスクス笑かされて、最後にキュッと締める感じ。
作中では色々な場面で過去の山田作品を暗にPRする演出がされていて、『東京家族』のポスターが貼ってあったり(ちなみに本作は東京家族のキャストがそのままの形で再登用されたもの。役名も少しづつモジって使われています。)、うなぎ屋の出前のあんちゃんが三輪バイクを走らせながら『男はつらいよ』の主題歌を歌っていたりで、ああ、もしかしたらこの映画は続編を踏まえたシリーズ化を考えているのかなぁ、とか。題材的に作りやすくはありそうだけど。
映画のクライマックスで周造が小津安二郎監督の『東京物語』を観ているシーンがありまして、で、現在午前十時の映画祭で丁度東京物語の上映やってるんですよね。ああ、これのタイアップだったんだ、と気づいて納得。
最近、邦画って言うとマンガやアニメの実写化やTVドラマの続編ばかりのイメージですが、こういうオリジナルで一本立ちした映画って監督がよほどビッグでない限り難しいんだろうなぁ。むーん。
【以下余談】
上映前の予告で知ったのですが、イソッチの『無私の日本人』が映画化されるらしい。
えーっとですね、元々の話『穀田屋十三郎』は『無私の日本人』の中の一編で、貧窮にあえぐ仙台藩中の宿場町が現状を脱するべく、知恵を絞り、大変な困難と苦渋を乗り越え、遂に目的を達する物語です。磯田先生が物語が書かれた発端にもこのような経緯があり、至って質実で心を打つ話なのですが・・・・以下、映画公式サイト。
だれだよ、コメディにしようって言い出した奴は!!
いやーね、武士の家計簿を忠実に映像化し過ぎたら、あんまり盛り上がりどころがなかった、っていう反省点からかなぁ、とは思うんですけど・・・それにしたってこう露骨なコメディ化は、原作既読組として流石に唖然とします。もちろん観てから文句言いますけど(言うの前提)。
投稿者 sbifb4 | 返信 (0) | トラックバック (0)